今年1月28日、経済アナリストの森永卓郎氏が死去した。原発不明がんと闘いながらも、亡くなる直前までメディアに出演し続け、世界経済の行方に多くの警鐘を鳴らしてきた。
「AIバブルは崩壊する…」「日経平均はこれから大暴落する…」
彼がこう語った背景には一体何があるのか。そして残された私たちは、この先行き不透明な社会をどう乗り越えていくべきなのか。
「闘う経済評論家」として世の中の歪に注目する息子の康平が、父・卓郎の「最後の問題提起」を真っ向から受け止め、私たちのこれからの人生に必要な「解」を紡いでいくーー。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』連載第40回
『高まる「株式資本主義」に対する不満…森永卓郎さんの最期の予言「これから大暴落がやってくる」を息子・康平さんが解説』より続く。
現時点で想定されていない突発的なリスクを「ブラックスワン」と呼ぶことがある。スワンすなわち白鳥は白いと信じられてきたが、突然黒い白鳥が見つかり、白鳥の概念が根本的に覆った。このように、「事前に予想できないが、もし発生すると影響が大きい」事象が「ブラックスワン」である。
ブラックスワンが発生する可能性は低いものの、相場ではこれまで何度もブラックスワンが発生している。むしろ「株価はずっと右肩上がり」と想定するのは危険だろう。
実際、現在の世界経済が想定していないリスクは確実に存在しており、もしリスクが顕在化したら、父の言うように大暴落が発生しかねない、と考えている。中でも実現性の高いものとして、「地政学リスク」、とくに「東アジアでの戦争」の可能性があげられる。
中国が武力によって台湾を統一しようとする、いわゆる「台湾有事」の可能性が高まっており、もし現実のものになれば、日本も他人事ではない。日本の国土が物理的に有事の被害を受ける可能性も高いが、仮にそうならなくとも、日本経済へのダメージは大きいだろう。
台湾周辺海域はいわゆる「シーレーン」、要するに日本の海上貿易の航路であるため、台湾で戦闘が起きた場合、輸出入が部分的に停止するリスクがある。
このような事態が起きれば、経済活動どころではなくなる。日本の株式市場も少なくとも短期的には相当なダメージを受けるだろう。
2024年11月のアメリカ大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。1次政権の実績をもとに、トランプ氏は横暴なイメージに反して戦争はしないという意見も多いが、今回は、台湾有事の可能性が高まったという懸念を持っている。
トランプ氏はかねてよりアメリカが他国の防衛を引き受けることに批判的だ。ロシアによるウクライナへの侵攻についても、ウクライナへの支援を停止し戦闘を終結させることを示唆してきている。 こちらで最新の株価情報をご覧ください。株価掲示板で日経平均株価掲示板の詳細もチェック!