ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、交流サイト(SNS)に批判的なコメントが殺到する、いわゆる「炎上」案件で、当該人物や企業、主催者が謝罪に追い込まれるケースは枚挙にいとまがない。一方で、炎上を静観することで鎮火に成功した企業もあり、専門家からは「炎上への対応方法も複雑化している」との声も上がる。
「人の練習聞かされる側はたまったもんじゃないんです」-。大阪市の大型商業施設のテラス内に設置されている南港ストリートピアノの公式X(旧ツイッター)にこう書きこまれたのは今月22日。誰でも自由に弾くことのできるピアノをうたいながら、演者を制限するともとられかねないこの投稿が炎上、運営者は謝罪するとともに27日にはピアノそのものを撤去したことをSNSで報告した。
総務省がまとめた令和元年の情報通信白書で「日本国内での炎上発生件数はモバイルとSNSが普及し始めた2011(平成23)年を境に急激に増加しており、個人・企業問わず炎上の対象となっている」と指摘されるなど、こうした炎上は新しいものではない。最近でも大阪のライブハウスで観客からの痴漢被害の申告に対し、企画運営会社が事実関係を説明する投稿で、観客に寄り添う姿勢が見られなかったとして批判が集まり、謝罪に追い込まれたこともあった。
こうした企業の姿勢について、デジタル化で生じるリスクへの対策サービスを企業に提供している「エルテス」(東京都)は「企業として一貫性のある誠実な対応が重要で、担当者独断での対応やその場しのぎでの対応は、かえって炎上を助長させる可能性がある」と指摘する。
一方で、WEB広告に登場したカップ麺「赤いきつねうどん」を食べる女性について「性的で、女性蔑視の広告ではないか」と批判された東洋水産は、こうした批判にあえて反応しなかった。今でも広告は閲覧できるし、公式Xのフォロワー数も増加、因果関係は不明だが一時、株価が上昇すらした。
エ社はこのように批判的な投稿が寄せられた企業が静観対応をとるケースについて「『炎上=謝罪』ではなく、相次ぐ炎上で、企業・消費者にも知見が蓄積されてきているからこそ、対応方法も複雑化している。多様な価値観の中で不快に思う人が存在するような振る舞いが批判を受けているなら慎重な見極めが必要だ」としている。 こちらで最新の株価情報をご覧ください。株価掲示板で日経平均株価掲示板の詳細もチェック!