日本の経済界はかつて、労働者の努力と創造性が国全体の繁栄につながるという信念に基づいていました。1945年後、日本は農地改革や財閥解体を通じて新たな経済体制を築き、物価よりも賃金が高騰し、労働者の価値が増大しました。この時期には「希少資源を持つ企業」という経営原則のもとで、ヒトそのものが価値創造の源泉となりました。
しかし、1980年代に達した日本の繁栄は一転、株価や地価の上昇が過度になり、実体経済と乖離する現象が見られ始めました。そして、アメリカ企業における「価値創造の民主化」を取り入れた企業の台頭とともに、日本企業もその流れに追いつくため、従来の労働者中心から株主重視へと方針を転換していきました。
この変化は、多くの人々にとって厳しい現実となりました。なぜなら、価値創造が民主化され、全ての人々がその恩恵を受ける時代から一気に株主や経営者の利益中心の時代へと移行したからです。